皮下点滴について

  • 2021.06.19

医療では点滴での治療が必要となることが多いです。一方で点滴治療を長くおこなっていると血管が硬くなったり、細くなったりして血管に管をいれることが難しくなることも多いです。こうした患者さんは抗癌剤治療を長くされてきた方に非常に多く、症状を緩和するための薬剤の投与が困難な場合があります。緩和ケアではそのような場合でも必要な薬剤が投与できるように、経験的な方法で皮下点滴(血管の中ではなく、皮膚の下に点滴をいれて投与する)を行うことが多くあります。水分補給だけでなく、抗生物質や止血剤、胃薬など様々な薬剤...

アナモレリン使用開始となりました。

  • 2021.06.19

日本発の悪液質による食欲低下、体重減少の回復を目的としたグレリン受容体作動薬アナモレリンが販売開始となりました。期待されていた薬剤ですので、使用対象となる患者さんと相談の上で、治療を始めていく方針です(対象となる癌の種類が限られています)。治療を行うには研修を受けた医師に相談する必要があります(イーラーニングが必要)。アナモレリンの対象となる癌以外の方は、同様の機序で効果が期待される漢方薬などで代替していくことになります。 ...

医療における方針決定について

  • 2021.06.19

何かを買う時、行動する時、毎日の生活の中で私たちはいろいろな意思決定をしています。今日は何をどこで、だれと、食べましたか? そうしたこともすべて何気なく行っている意思決定です。 医療においても同様に治療方針を決定していく必要があります。どうやって治療するのか、どちらの治療を選ぶのか、療養場所をどうするのか。自分だけで決定することは難しいため医療者から十分な情報を提供してもらい判断していく必要があります。しかし医療分野では意思決定が困難になってしまっている方が少なくありません。なぜでしょう...

つらさの緩和

  • 2021.04.01

日本では最近になり安楽死の問題が取り上げられることが多くなってきました。安楽死問題は様々な課題を含んでおり、一律に論じることはできません。安楽死とは一線を画して、苦痛緩和のために眠気を味方につらさを和らげる方法を苦痛緩和のための鎮静と呼び、命の短縮を目的としない症状緩和治療として様々な研究、実践が行われています。安楽死は死を意図した医療行為ですが、苦痛緩和のための鎮静は、文字通り苦痛を和らげるための治療であり、死を意図したものではありません。ご本人のつらさ、意向、ご家族の意向、複数の医療者によ...

リハビリの意義

  • 2021.04.01

リハビリテーションと聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。多くは骨折後などの整形外科疾患の方が筋力トレーニングを行い日常生活へ復帰するための訓練というイメージかと思います。緩和ケアでのリハビリは、筋力を回復するために実施することは少なく、何とかベッド周りや自宅内、少し外出したり自身の身の回りのことを行うための機能を維持することが目的となります。自分自身で身の回りのことができなくなることは、心理的にもつらく自律性が失われてしまう感覚になります。そのような時にリハビリテーションを実施して立...

症状緩和治療と抗癌剤治療

  • 2021.01.26

緩和ケアという言葉から「末期」をイメージされる方もいらっしゃいますが、現在の「緩和ケア」は末期状態で受ける治療ではありません。積極的に抗癌剤治療を行っているが、抗癌剤治療の副作用でしびれや痛みなどがでている、癌に伴う症状として痛みがある、そのような方では適切な積極的緩和ケア診療を受けることになり、より症状も安定し日常生活をおくることが可能になります。また最初から緩和ケアの専門的治療、専門的スタッフと関わっておくことで、気持ちがつらい時、本当に病状が悪化した時に速やかに様々な支援、治療を受けるこ...

がん患者さんの体重減少に対する薬剤

  • 2021.01.26

がんに罹患した患者さんにとって体重減少は日常生活に大きな影響を与えます。体重減少、筋力低下により外出が難しくなってきたり、自宅内での移動や着替え、入浴など普段は何気なくできていたような動作が難しくなってくることも多いです。食事をしても筋肉が落ちて体重が減少してしまうような病状をがん悪液質と呼びます。これまではこのような病状に対する薬剤として漢方薬(六君子湯など)治療であったり、ステロイド治療が行われてきましたが、漢方薬は飲みにくさがあり継続が難しいことや、ステロイドは副作用の問題もあり長期的に...

病院へ入院すること

  • 2020.12.10

コロナ感染拡大の中で病院や施設での面会制限が強まってきています。病院医療従事者としては苦渋の判断を迫られており、制限自体は尊重する必要があると感じています。一方で患者さん一人の人権、最後を家族と過ごすという場の尊重という面から考えると非常に厳しい環境です。意識が混濁されていた患者さんが亡くなられる数日前に急にはっきりして数時間だけきちんと会話ができる、不思議と元気になる「仲良し時間」があります。そのような人の一生、家族の一生の大事な一瞬の共有自体が、今の医療体制の中では難しくなってきています。...

在宅医療を利用するタイミング

  • 2020.11.24

在宅医療は一人では通院が困難な方(歩行可能でもご家族と一緒に通院されている状況)が対象となります。通院に付き添いが必要な状況で、外来での待ち時間で体力を消耗していないでしょうか。診察時に十分に主治医と病状や治療方針、お薬のことなど相談できていますか。診察で消耗してしまうと大事な人生の意思決定を慌ててすることになったり、外来で混んでいる医師に気をつかって医師の言われた通りに従うだけになったりしてしまうことがあります。 在宅医療の最大のメリットは、自分が住み慣れた環境で自分の体を向き合いなが...

治らない病気との向き合いかた

  • 2020.10.18

治らない病気の代表として進行癌がありますが、がんに罹患した時に、多くの方がまず気にかけるのが家族のことです。一方で家族の立場では、本人の気持ちの負担が心配になります。このお互いの不安や気がかりは相手への思いやりから発生しているのですが、気をつけないと時にすれ違ってしまいます。家族に心配はかけたくないから、外来は全部自分で受診してその時に聞いた説明も家族には伝えない、治療方針の決定は全て自分で行う。そのような場合には、実際は家族は心配していて何も聞かされないことへの不安(本人には直接聞きにくい)...

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